2024.07.16Vol.646 我が長男の留学体験談
今回はタイトルの通り、2023年12月23日から2024年2月25日までの約2ヶ月間、アメリカでのホームステイを経験した高一の長男の体験談を紹介する。その前に少しだけ親としての感想を述べる。関西空港まで車で迎えに行った帰り道でのことだった気がするのだが、次のようなやり取りをした。「向こうの友達と遊んだ?」「何度かショッピングセンターに一緒行ったりした」「彼らが声掛けてくれたの?」「全部自分から誘った」。留学に行く前にいくつか伝えたことがあった。「待つのではなく自分から積極的に行くこと」、「ホームステイ先では自分の部屋に閉じこもらず、できる限り彼らと時間を過ごすこと」、「向こうでしかできないことをすること」などだ。だから、長男から上の報告を受けたときは嬉しかった。また、向こうに着いてから中々連絡をしてこないので、買い物に行っている最中に、助手席に座っている妻がラインのテレビ電話をすると、ちょうどホストファミリーとカードゲームをしているところで、長男が間に入ってそれぞれの紹介をし始めた。私は運転をしている最中だったこともあり、「うちの息子をよろしく」ということすらきちんと伝えられなかった。その時もそうだったが、それからも電話をしたときに部屋にこもっていたことはただの一度もなく、いつも誰かと一緒だった。もちろん、その誰かは日本人ではなかった。拙い文章ではありますが、読んでいただければ幸いです。
英語力がない、つまり、日本語を使う時のようにスムーズに雑談ができないということが留学中に大きな課題だとして見えて来た。僕は映画を観るのが好きなので、面白かった『ワイルド・スピード』について語り合おうと試みたが、お気に入りのキャラクターの名前を伝えられただけで、好きな理由などは全く説明できなかった。今思えば積極的に発言しようとするあまり、会話が弾まなかったこともよくあった。もちろん英語が上達するには自ら話すということは大切だ。しかし、会話を続けるには相手に質問を投げかけて答えてもらうことがもっと必要だったと後悔している。相手の英語を聞き取るだけでも学べることがたくさんあるはずだ。
また、話題のなさも問題であった。最初の頃は、日本とアメリカの学校の違いなどを主に話していて受けも良かった。けれども、段々とそのネタも尽きていった。その後は話題探しに困った。アメリカンジョークが実在することは知っていたが、英語の熟練度が低くそれに挑戦することすらできなかった。そんな中で方策を偶然見つけた。ある日、友達と一緒にショッピングモールへ行きナイキのスニーカーを買った。その後はずっとその靴を履いて過ごしていた。そうすると学校やバス車内などで知らない人からも「その靴かっこいいな」と声をかけられるようになった。これにより、話始めるきっかけができて以前より気楽になった。けれども、会話が全然続かないということには変わりなかったので、依然として英語の上達は必要であった。
ホストファミリーと初めて対面した時、本当に仲良くなれるか不安だった。なぜなら、彼らの話す速度が日本の英語の先生よりもかなり速いのに加えてホストファザーが強面だったからだ。最初の一週間は学校が休みで一緒にクリスマス休暇を過ごしていた。その中で僕が特に意識していたことは分からないなりに自分から話すということだ。当初は、彼らが何を言っているのかを聞き取ることでさえも困難だったが、聞き手に徹するのはつまらなかったからだ。ホストペアレンツが学生たちと違ったのは、僕の英語力上達のために「ゆっくりでもいいから自分で説明してみて」と練習する機会を与えてくれたことだ。それに加えて彼らは六十代であり、話す速度がゆっくりだったおかげでどうにか付いて行けるようになった。
そのようにたくさん会話している中で新たな発見が色々あった。渡米するまではアメリカに偏見を抱いていており、端的に言えばアメリカ人は主張が激しく一方的で、町では銃を持っている人がいるのでとても危険だと思い込んでいた。しかし実際は、イメージと異なっていて日中は安全であり彼らは人の話をきちんと聞いてくれた。
ある日両親の職業について尋ねられたので、お父さんは塾長だと説明した。けれどもアメリカには塾がないらしく上手く伝わらなく、僕はその事実に驚いた。なぜなら、アメリカには日本の大学よりも優れている学校がたくさんあるにも関わらず、日本人のように塾に通いつめたり受験のために進学校に行ったりすることがないからだ。実は留学中に海外の大学に行きたいと思うようになったので、それについて調べていくと高度な英語力が必要なのは勿論、課外活動を重視しておりいわゆるテストのための勉強は比較的重視されていなかった。通っている私立高校では勉強ができるという意味での賢い人は一定数いるが、勉強だけに注力している生徒が多数派である。僕のように読書をしている人もほとんどいない。この現状をつまらないと思っており、多分大学にいっても同じような光景を目にすることになる可能性が高い一方で、日本の教育システムとは非常に異なる海外の大学が魅力的に思えたのだ。海外ではアイデアを生み出すということをより重視している。例えば、アメリカではそもそも宿題の量が少なく、その傾向も異なっている。日本と同じような問題演習もあったが、自分でアメリカの州について調べて発表の資料を作ることや、歴史に関する文章を読んで簡単な問題に答えるというものがあった。このような宿題は積極的に取り組む部類のものであり、能動的になることができる。
一方日本では、小テストのための問題演習や暗記が宿題として与えられることが大半だ。けれどもこのような環境下で能動的になるためには与えられた課題をきちんとこなした上で課外活動に積極的に参加することが良いと思う。僕の場合、阪大SEEDSという阪大で講義を受けられるプログラムの選考を通過することが出来た。実際に活動することの出来る場を与えられたので能動的に取り組んでいきたい。実はSEEDSでは留学生と交流する機会も設けられている。僕はこの活動をうまく利用して英語力、創造力ともに身に着けていくつもりだ。