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2025.08.19Vol.699 人生ビンゴゲームのルールブック

 1週間前か2週間前ぐらいにも「このまま何もやり遂げないままに人生終わってしまうのかなぁ」となっていた。そういう類の考えが去来することは私にとって珍しいことではない。自分の頭の中でのことなので全否定になっているだけで、誰かに向かってそのことを伝えるのであれば、「大したこともできないままに」ぐらいには表現を弱めるのであろう。そうでもしなければ、受け手にいらぬ気を遣わせて「そんなことないですよ」と無理やり言わせることになってしまうからだ。今誰かに、「じゃあ、何をやり遂げれば満足するのですか?」と問われても、そのことについて深く考えたことがないから答えられないし、結局は挑戦しようとしていない自分、目標を持って、それに向かって真剣に取り組もうとしていない自分、に納得が行っていないのだろう。1, 2か月前に、孫正義が若い頃に語った「脳みそがちぎれるほど考えろ」という言葉に久々に触れ、「俺、そんなに頭使ってないよなぁ」となったのも、このタイミングで冒頭の自問をするきっかけになったのかもしれない。
 「このまま人生終わるかも」となっている割には、若い頃に比べて焦る度合いが弱まっていることに気づいた。歳を重ねたことでそういうことに関するセンサーが鈍くなっていることが原因かな、とも考えたのだが、それは違うような気がするし、だからと言って他の答えも思い浮かばないので、そのまま放っておいた。すると、ふとした瞬間に「あっ、そういうことか」となった。私の場合、閃くのは大抵歩いているときである。20代の頃に抱いていた焦燥感は、可能性が減って行くことに対してものだったのだ。子どもが生まれると、親は「この子は将来、勉強、スポーツ、音楽のどの世界で活躍するのだろうか」というような淡い希望を抱く。そして、成長するにつれて一つずつ選択肢が消えていく。プロスポーツ選手にさせたい親であれば、「野球、サッカー、ゴルフのどのスポーツでさせようか」などとなるのかもしれない。それらは親の勝手な願望であり、本人がそのようなことと向き合い始めるのは10代である。そんなことをぐちゃぐちゃと考えていて、たどり着いたのがビンゴである。この夏に祭りに行ったわけではなく、テレビでビンゴ大会の様子を目にしたわけでもない。
 物心がついたときには手元にあった5×5の自分だけのビンゴカード。まずは指示された通り真ん中のところを下に押す。それは、自分の個性なのかもしれない。効率良く、真ん中を通る縦、横の1列か斜めの2列のどこかが揃うことを願いつつゲームはスタートする。ここで断っておきたいのは通常のビンゴのルールとの2つの大きな違いについて。1つ目は、1列揃ったら景品と交換にカードが回収されるわけでは無く、生きている限り保持し続けられ、2列目、3列目を狙うことができること。また、早ければ早いほど良いものがもらえるわけではなく、その列が揃ったときに何が手に入るかは当の本人には事前にある程度明らかになっていること。
 ここからは私が握りしめているカードの話を中心に展開していく。20歳ぐらいまでは順調に番号が呼ばれていた。そうそう、ここでもう一つ伝えておかなければいけないのは、人が箱の中からボールを取り出すようなアナログ式ではなくデジタル式になっていて、一部の例外を除きほとんどの人が30歳までに揃うことがないよう裏で操作されているということ。さて、マイカード。それが20歳なのか、22歳なのか、それとも25歳なのか、どこかのタイミングで、「その数字はないなぁ」、「あれっ、またない」、「おかしい、今度もや」と一気に減速した。そのことにイライラする一方で、「やったリーチや」という声が耳に入る。振り向くと、私のカードは真ん中以外で10個以上も開いているのに、その人のものはパッと見たところたったの5つか6つぐらい。これがビンゴゲームの面白いところである。穴の多寡ではなく、ラインが揃ったかどうかで勝敗が決まるからだ。
 人生ビンゴゲーム。30歳になるとまだ残っているすべての数字は削り取られる。もう番号は関係なくなるのだ。その時点で終わりかと言えばそうではない。代わりに、自力でこじ開ける権利が与えられるからだ。自分が揃えたい列を見定め、そのままになっている残りの所をどうしたら開けられるのか自分なりに想像して、手を打っていく。すぐにうまく行くわけではない。その時に粘り強く継続するか、それとも別の策を講じるか。
 欲張りな性格だからなのか、いろいろなことができる人でありたい気持ちが強いからなのか。未だに少しでも早く1列揃えることよりも、できる限り多くの列でリーチが掛かることを望んでいるような気がする。少し話は変わるが、ビンゴになるのは意外と真ん中を通らないパターンの方が多いのかもしれない。真ん中は自分が個性、長所と思い込んでいるだけで、世の中で通用するのはそれとは別の自分かもしれないからだ。
 構想段階ではもっとうまくまとまるはずだったのだが。私がイメージしていることのせめて8割ぐらいは伝わっていることを願うのみである。

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