志高塾

志高塾について
志高塾とは
代表挨拶
通塾基本情報
アクセス
お問い合わせ
志高塾の教え方
指導方法
志高塾の作文
志高塾の添削
読解問題の教え方
使用教材と進め方
志高塾の教え方
志高く
志同く
採用情報
お知らせ
志高く

2020.08.18Vol.459 正しさの証明

 高校生の男の子(A君とする)が電話してきて「相談したいことがあるのですが、今度の僕の授業のときに先生はおられますか?」といつになく改まった口調で聞いてくるので、「生徒たちのために、教室が開いている限りそこにいるのが俺の役目やろ。しょうもないことを聞くなっ!」と一喝しそうになったのだが、実際に口をついて出たのは「じゃあ、その時間まで頑張っておるようにするわ」という言葉だった。あら不思議。
 許可なく詳細をオープンにするのは憚られるので、ぼかしながら話を展開して行く。「大学入学後にビジネスをしたくて、そのためにはお金が必要。友人と2人でブログを書いて、その広告収入で稼ごうと考えているのですが、どう思われますか?」というのがその骨子であった。お母様に「松蔭先生に相談してみたら」とアドバイスされて、私のところに話を持ってきた。こういう風に誰かが自分を頼ってくれるというのは嬉しいことである。
 まず「何でわざわざ、A君の文章を読まなあかんねん」とぶつけた。それに対しては、「高校生が、~のテーマで文章を書くのって珍しいので、読んでもらえると思うんです」と返って来た。「~」としているため伝わりづらくて申し訳ないのだが、私に言わせれば、特段珍しいものではない。珍しいと仮定したところで、その「珍しさ」の効力はすぐに失われる。情報があふれている現在、中身がないものを継続的に読もう、とは間違いなくならない。パンケーキがブームになった頃、いくつかの店を訪れたが「また来よう」とはならなかった。おいしくなかったからだ。その他、A君が目標としている短期間でお金を稼ぐことに対して、ブログが最適の選択肢の1つであるとも思えない、ことも付け加えた。
 2人でやろうとしていることにも疑問を投げかけた。昔で言えば、ソニーやホンダは共同経営でうまく行った。それはお互いの得意分野が異なり、「営業と技術」と「技術と経理」と言ったように補完し合えたからだ。グーグルの2人の創業者の関係がどのようなものであったかを私は知らない。マイクロソフトに関しても同様である。友人と組んだのかもしれないが、友人でなくても「こいつと一緒にやりたい」、「こいつとならうまく行きそうだ」と思わせるだけの能力を双方が持っていたのではないだろうか。私が伝えたのは、「1人でやる勇気がないから、話に乗ってくれそうな友人を誘った、というのであればうまく行かへん可能性は高いで」ということ。
 また、A君が大学入学後に始めたいと考えているビジネスのイニシャルコストはあまりかからない。しかも、文章を書くことと何ら関係が無い。それであれば、ビジネスに直接つながる技術を磨いた方が良い。そうすれば、今の時代クラウドファンディングなどでお金を集めることができる。その他、お金を稼ぐことに関しては「生涯年収」に関する話をした。成果をその都度ちょこちょことお金に変換しようとするのではなく、実力をつけて後から稼げるようになった方がトータルは大きくなるかもしれない、と。
 「Vol.455 借り借り」で、「『まだ若いから君には分かんないよ』みたいなことを言われて、腹を立てたのを鮮明に覚えている。」と述べた。「まだ高校生だから君には分かんないよ」と言いたいのではない。A君の発言に対して、私は「なんで?」、「ほんまか?」ということを繰り返した。そのすべてに、とは言わなくても、ある程度は説得力のある返答ができなければならない。それは、今すぐ私に、ということではない。「分かったような顔で偉そうなことをいいやがって」と思ってもらって全然構わない。ただ、自分には嘘をつかないことである。自分自身の中できちんとした答えを持てなければきっとうまく行かない。
 私が願うことは、今のその気持ちを忘れずに持ち続けて欲しいということ。大学生のうちではなく5年後でも10年後でも良いのだが、今思っているものと全然違っても彼が何らかの形でビジネスを始めてくれることを期待している。
 自分が考えていることに周りの人が自分が望むタイミングで諸手を挙げて賛意を表してくれるわけではない。私が、親御様に何らかの提案をしても受け入れられないことは普通に起こる。当たり前の話である。その場合、結果を出して認めてもらうしかない。そして、それにはそれなりの時間がかかることが少なくない。「正しさの証明」と題した。正しいどうかは分からないので、「間違えていなかったことの証明」ぐらいがちょうどいいのかもしれない。なぜパンケーキがおいしくなかったかと言うと、彼らの中に「おいしいパンケーキを食べて欲しい」という気持ちが元々なかったからだ。「どうやって稼ぐか」を考える前に「自分と関わる人のことを本当に思っているか」の問いに自信を持って「はい」と答えられるのであれば、そのビジネスはそれなりにうまく行のではないだろうか。

PAGE TOP