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2018.07.16Vol.358 生活に役立たないものを”意見作文”と呼ぶことなかれ

 意見作文に取り組んでいる中高校生に私はしばしば次のようなことを伝える。「学校で書かされているわけではなく、わざわざここに通ってまでやってるんだから、実生活に生きるようにしなよ」と。
 2か月ほど前、高校1年生の女の子がとてもとても、そう、とても嬉しい作文を書き上げたので、それについて「すごく嬉しいことがありまして」というタイトルで取り上げる予定であったが、延び延びになって今に至る。どのような課題であったかは忘れたが、確か「自分が抱えている課題に対して、自ら問いを立て、それを解決する方法を考案しなさい」というものであったような気がする。仮に、本番に弱い人がいたとする。その場合「なぜ自分は本番に弱いのか?どうしたら、それを克服し、結果を出せるようになるだろうか?」と自問し、自答することになる。
 当時彼女は学校のフランス留学プログラムに参加するかどうかで迷っていた。なぜか。フランスに行くと、高2の選択科目でフランス語を選ばなければいけないからだ。選択科目のもう一つの候補が化学であった。将来なりたい職業に就くには、理系に進まなければならない。そのためには、受験科目として化学が必要である。高2で化学を勉強しなければ理系への道が閉ざされると考えていたため、岐路に立たされていたのだ。それゆえ、どちらにすべきか、と自らに問うていた。そのようなものを私は二者択一的思考、と勝手に呼んでいる。なぜ、やる前から二兎追うことを諦めるのか。彼女の作文に目を通して「化学なんて自分でできる。実際、俺は学校の授業を真面目に聞いていなかったから、参考書を買って自分で勉強した。京大に行くぐらいならそれで足りる。ちょっと待ってて」と伝えて、パソコンで「照井式」と検索した。すると、「独学で確実に東大・医学部に合格できる勉強法」というブログの「東大合格者から絶大な評判!照井式解法カードの使い方まとめ」という文章がヒットした。それをプリントアウトして「ほらっ」と見せた。そして、そこからしばらくは私の自慢話。「これは、ちょうど俺が高校生のときに出た参考書で、そのときは有名じゃなかったけど、それを手に取った俺って先見の明があったんやろうなぁ。さすがやなぁ」と。ちなみに、物理は同じ出版社から出ていた「橋本流」で学んだ。つまり、物理の授業も適当に受けていた、ということ。くだらない話はさておき、翌週、授業に来た彼女をつかまえて「で、どうなった?」と聞いた。すると「フランスに行くことにしました。応募しただけなので、選ばれるかどうかは分かりません。そして、あのテキストも買いました」と返ってきた。後日、無事に留学のメンバーに選ばれたことを報告してくれた。
 彼女がその参考書を使っても理解できなければ、大学受験レベルの化学なんてほとんど何も覚えていないが、私が責任を持ってゼロから勉強して納得できるまで教える。そうならないことを心の底から願っているが、それだけのエネルギーを割いてあげたいと私に思わせるだけの選択を彼女はした。大げさに表現すれば、この結果によって、彼女はこの先もいい意味で欲張りでいられるか、もしくはどちらか1つを諦めるという選択をするようになるか、が決まる。
 ゼロから勉強する、なんて格好つけたことを述べたが、もし、そのような状況に置かれたら「俺の生徒が化学で困ってんねん。誰か上手に教えられる人知らんかな?」と伝手を使って人探しすることに私は全エネルギーを費やすことになるのであろう。そして、私は彼女に言葉を掛ける。「自分でできへんことは、それが得意な人に頼るのも生きていく上で大事なんやで。それにしても、学びの多い作文だったね」と。

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