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 2か月前に始めた社員のブログ。それには主に2つの目的がありました。1つ目は、単純に文章力を上げること。そして、2つ目が社員それぞれの人となりを感じてとっていただくこと。それらは『志高く』と同様です。これまでXで投稿していたものをHPに掲載することにしました。このタイミングでタイトルを付けることになったこともあり、それにまつわる説明を以下で行ないます。
 先の一文を読み、「行います」ではないのか、となった方もおられるかもしれませんが、「行ないます」も誤りではないのです。それと同様に、「おなじく」にも、「同じく」だけではなく「同く」も無いだろうかと淡い期待を抱いて調べたもののあっさりと打ち砕かれてしまいました。そのようなものが存在すれば韻を踏めることに加えて、字面にも統一感が出るからです。そして決めました。『志同く』とし、「こころざしおなじく」と読んでいただくことを。
 「同じ」という言葉を用いていますが、「まったく同じ」ではありません。むしろ、「まったく同じ」であって欲しくはないのです。航海に例えると、船長である私は、目的地を明確に示さなければなりません。それを踏まえて船員たちはそれぞれの役割を果たすことになるのですが、想定外の事態が発生することがあります。そういうときに、臨機応変に対処できる船員たちであって欲しいというのが私の願いです。それが乗客である生徒や生徒の親御様を目的地まで心地良く運ぶことにつながるからです。『志同く』を通して、彼らが人間的に成長して行ってくれることを期待しています。

2023年12月

2024.12.27Vol.44 カピバラ元年(徳野)

 気がつけば12月も下旬。この時期になるとマスメディアがこぞって、お風呂でまったりと暖を取るカピバラと、それに「可愛い~」と歓声を上げる見物客の姿を映し出す。そういったニュースに対して去年までは一瞥して終わっていたのだが、今更ながらカピバラに「マイブーム」の兆しがある。きっかけは地元の「とくしま動物園」におそらく15年ぶりに訪れたことだ。しばらく来ないうちにカピバラの飼育頭数が日本一を誇る施設になっており、その数なんと90頭。げっ歯類ならではの繫殖力でまさに鼠算式に増えてきたらしい。同じエリアにいるシマウマ2頭に配慮してなのか公開されていたのは30頭ほどではあったものの、その規模でも野生の群れの実態を垣間見ることができて大変興味深かった。私は餌やり体験に参加したのだが、彼らへのイメージが180度変わったと言っても過言ではない。食料が関わってくると特に雄は目の色が変わり、飼育員さんに突進して池に突き落とすこともあるとのことだ。柵越しに差し出される笹1本を巡って数頭がどこかで絶えず争い、小柄な幼い個体に対しても情け容赦なかった。至近距離で繰り広げられる肉弾戦の迫力に怯んだ私は思わず笹を引っ込めてしまった一方で、日を経るうちに、あの愛嬌ある外見と気性の荒さのギャップにじわじわと心惹かれていった。凶暴ではあったが、園内の動物たちの中で間違いなく最も生き生きとした姿を見せていたからだ。
 「ブーム」といってもGoogleでの検索回数が増えた程度ではあるものの、調べるうちに関西だと「神戸どうぶつ王国」がカピバラに力を入れていることをつい数日前に知った。彼らが南米原産なのにちなんで8頭のために世界最大級の湿地パンタナルを再現した専用エリアが今年オープンした。動物たちのストレスを軽減させる「生態展示」という手法が取り入れられている。ちなみに、他の代表的な手法には「形態展示」と「行動展示」があり、後者の具体例としては旭山動物園にあるアザラシの円柱型水槽が有名である。一方で、徳島の子たちの現状であるが、とりあえず収容面積に余裕があるサバンナエリアの片隅に集められ、時たまシマウマの餌を盗み食いして足蹴にされている。莫大な資金を投じずともカピバラの本性を露わにできているので、あえて言うなら動物本来の身体能力などの特性を自然に引き出す行動展示に該当するだろう。どちらが本当に恵まれているのか、その論点にそもそも意味があるのかを私が判断するには、比較材料を得るために足を運ばねばならない。神戸どうぶつ王国ではカピバラたちと直接触れ合えるとのことなので、この年末年始に色々な意味でぬるま湯に浸かっている彼らを愛でつつ、環境の違いがどう影響するのかを観察しに行く予定だ。
 とくしま動物園でもうひとつ印象的だったのが、飼育員さんの若い個体への接し方だ。先述の通り、子どもであろうと乳離れを済ませれば群れの自立した一員として扱われる。(人間の年齢に置き換えると小学校高学年から中学生に該当するらしい)年長者より先に食料にありつこうとすればすぐさま攻撃の的になるのが厳しい現実なのだが、それに対する反応には個性が表れており、すごすごと退散していく子もいれば、大人相手に睨みをきかせる子もいた。そして、カピバラたちの諍いがいったん落ち着くと、飼育員さんは間食にあぶれた子に手ずから与えていたものの、後者の「骨のある」タイプに限定しての対応だった。「根性のある奴にだけご褒美をあげる」という方法は、言語コミュニケーションが不可能な対象だからこそ許されるものではある。人間の子ども相手にいわゆる「成果報酬型」を適用しても、おかしな方向に転んでいってしまうことの方が多い。最近読んだ記事によると、大人が物で釣ってまでやらせようとすることは、そのだいたいが子どもが面倒臭がる物事なので、ご褒美に頼れば頼るほど子どもの無意識下に「勉強や習い事とは何か貰わらないとやる気が起きないほど嫌なことなのだ」という価値観が刷り込まれていくらしい。
 だが、明確に語ってくださったわけではないが、あの飼育さんからは比較的過酷な集団生活を生き抜く力を身につけさせることを目標に日々向き合っている姿勢が窺えた。「愛玩」とか「憐れみ」とは全く異なる種類の、将来を見据えた愛情の注ぎ方がそこにある。人間においても大切なのは、子どもが何かを自分の力でやり抜こうとする気概に目を留めること、それを通して出来ることが増える喜びを引き出してあげることである。大人の目線で回る動物園がこんなに刺激的だとは思い寄らなかった。
 今回が2024年最後の「志同く」だというのに23時台の更新となってしまった。それだけでなく、特に低学年の生徒との向き合い方において、例の飼育員さんとが持っているような本質的な部分へのアンテナの弱さを突き付けられた1年でもあった。来年末は少しでも明るい総括をできる状態でいなくてはならない。

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