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2024.02.13Vol.627 ヤスコの本

 2017年3月から2019年3月までの約2年間は学生講師として、2019年4月から2021年3月までの2年間は社員として、それ以降は授業には入らず事務員として関わってくれている女性が、戸部寧子(とべやすこ)というペンネームで作家デビューをし、『トモルの海』という作品で『第4回フレーベル館ものがたり新人賞』を受賞した。今回は、彼女とその本がテーマである。
 二男と三男には読ませたものの私は開かずじまいだったので、「ブログで扱うからには」と一昨日慌てて手に取ったのだが、まだ半分にも到達していない。野球好きの小学生の男子「トモル」が主人公である。それゆえ、一人称は「おれ」となっている。彼女自身と「おれ」が私の中ではうまく結びつかないのだが、そのようにして自分からできる限り遠い所に置くことで、知らず知らずのうちに主人公に自分が投影しないようにした、というのが私の見立てである。これに関しては、本人に直接確かめてみることにする。その中で、高校野球をテレビ観戦した後の場面が次のように描かれていた。「でも、やっぱり今日もかっこよかった。なんであんなボールを捕れるんだろう。胸がどきどきして、むしょうに体を動かしたくなった。よし、練習だ。」。小学生の頃、春休みや夏休みは甲子園の開会式が待ち遠しく、用事が無ければ、第1試合から第4試合まで一日中テレビの前にかじりついていることもあった。試合と試合の間の30分ぐらいはやることがなく暇なので、家の近くの公園で、ピッチャーになりきり壁当てをしていたことを懐かしく思い出した。
 教室に通えないわけでは無いものの、電車で1時間ぐらいのところに引っ越したことを機に事務員になったのだが、辞めるのではなくそのような形で関わりを持ち続けてもらうことを私が望んだ。私は人に相談するということは基本しないのだが、彼女は私の思い付きに対してうまく反応してくれる。最近で言えば、オンラインを本格的に始めることや、それに伴って、どういうやり方をしているのかが分かるようにホームページに載せる必要があることなどを話した。そのことに限らず、アイデアをほぼ一方的に伝えて、大抵は「まっ、そういうことやから、ちょっと考えておいて。よろしくー」というような形で電話は終わる。こじつけるわけではないが、私にとって彼女は、適当に投げても、ちゃんとボールを返してくれる壁のような存在である。
 彼女の志高塾における仕事の中で特に重要なのが本に関わることである。どのような本を購入するかを含め、3カ月に1回のペースで、テーマを決めて、講師たちに本の紹介を募り、それを受けてポップなどを作成して、生徒が手に取りたくなるように3つの教室でディスプレイしてくれている。今回、ある講師が、満を持して『トモルの海』を候補に挙げた。それに対する彼女のコメントを最後に紹介する。なお、これは国語のすべての講師がメンバーとなっているメーリングリスト上でのものである。読んでいただければ、「彼女自身と『おれ』が私の中ではうまく結びつかない」の意味を少しは理解していただけるはずである。プロスポーツの世界では、2年目のジンクスという言葉があり、3年連続結果を出して一人前と言われる。処女作以上に産みの苦しみを味わうのであろうが、まずは2作目、そして、3作目が出版されることを楽しみにしている。一人称がどのようになるのかも気になるところである。
 ちなみに、『志高く』や『志同く』に関して、Xでコメントしているのも彼女である。果たして今回はどのようなものになるのであろうか。では、彼女が内部の講師向けに送った、人柄がにじみ出ているメールをお楽しみください。もちろん、作家先生の許可は取っています。

 みなさんにお話するほどの話題がなく恐縮ですが、ひとつだけ、これはお伝えせねばと思ったことがあります。(長くて重いので、適宜流して頂ければ…)
 応募作を出版に向けて改稿したのですが、わたしの場合、歴代の受賞作と比べて完成度が(謙遜ではなく)大変低く、ページ数も少なかったため、一から書き直す必要がありました。意見作文を自力で書いて、先生に見てもらってやりとりして、「よし、今のを踏まえてもう一回書こうか!」という感じでした。
 改稿中は、行きづまったり、何を書けばいいのかわからない状態に陥ることがたくさんあったのですが、そのたびに編集者さんが、「この人は今、どんな気持ちなんでしょう?」「どうして、こう書きたいと思いましたか?」「ここは、読み手が納得できるような説明が必要です」というように、問いや助言を重ねてくださりました。でも、「答えを出すのはあなたですよ」と、あくまでボールの主導権はこちらに持たせてくれていました。
 自分のなかでくすぶっているものを引き出してもらったり、これまで考えきれていなかったことにじっくりと向き合う時間や、自分のなかにはなかった新しい視点をもらったり……。
 「これってまさに、志高塾でやっていることじゃないか!」と気づいたときは、大変感慨深かったです。改めて志高塾が目指すものの意義や、それに共感して指導してくださっている先生方の存在の大きさをひしひしと感じました。
 「いったいこの先どうなっちゃうんだろう」と暗い気持ちになる、混沌とした時代のまっただなかですが、今このときも、志高塾でうんうんうなりながら考えをめぐらせている子どもたちと、かれらに伴走し、真摯に向き合ってくれる先生方がいると思うだけで、光が差してくるような気がします。
 ちょっとなにが言いたいのかよくわからない文章で申し訳ないのですが…。
 とにかく、そういう場所の一員としていられること、そんなすばらしい方々とのご縁に恵まれたことが、幸せで誇らしいです。改めて、みなさまに心から感謝申し上げます。
 拙著に関しては、いろいろと拙く、粗ばかり目立ちますが、まだまだ新人とお手柔らかに見て頂ければ幸いです…。実は、志高塾のみなさんに(先生にも、生徒にも)読んで頂くのが一番緊張します…。ひよっています…。吐きそうです…。
 イラストレーターさんに描いて頂いた挿絵はどれも本当に美しくすてきなので、ぜひそちらだけでもご覧頂ければ…。

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