
2025.03.18Vol.679 キャンセルキャンセル界隈
例の如く「後編」は先延ばしにして別の話題を。週1回教えに行っている小学校の生徒が『コボちゃん』のタイトルで「~キャンセル界隈」としていたので、それに倣ってみた。なお、「キャンセル界隈」とは、特定の行動をしない人々や、その行動を指すネットスラングであり、私が初めて耳にしたのは、お風呂に入ることを避ける「風呂キャンセル界隈」のはずである。子供たちと接するので、新しい言葉に触れる機会は少なくない。その1つに「あーね」がある。私が解説した際に、生徒がそのように返して来ることがある。「あーなるほどね」や「あーそうだね」の略である。私に対するその言葉遣いが適切かどうかはここでは横に置いておくことにする。新語の多くは省略系のはずなのだが、「キャンセル界隈」はその限りではない。では、この言葉というのは一体どのような目的で生まれたのだろうか。「外出キャンセル界隈」は「インドア派」で、「人付き合いキャンセル界隈」は「人付き合いが苦手(嫌い)」で済む。余計なものを後ろに付けることで、そういう自分を正当化しようとしている気がしてならない。ほとんどの人は好きなこと楽しいことだけをやって生きて行けるわけではない。人と話すことが苦手でも仕事において必要に迫られればそんなことは言っていられない。一歩踏み出すことで新たな発見があるかもしれないし、どうしようもないということを再確認することでコミュニケーションを極力求められない仕事を改めて探すことにつながるかもしれない。だが、「人付き合いキャンセル界隈」というレッテルを自らに貼ってしまっては、それこそその界隈から抜け出せなくなってしまう。
先週、一泊二日で岡山に行き、二日連続でゴルフをしてきた。念のために断っておくと、今年初めてのラウンドである。12月の中旬から3か月間、練習すらしていなかったのでクラブを全く握っていなかった。ゴルフを始めてもうすぐ4年になる。これまではラウンド中はずっとカートに乗っていたのだが、岡山では歩くことに決めた。久しぶりなのでボールはあっちこっちに行き、山岳コースでアップダウンが激しく、また、グリーンから次のティーグラウンドまでも距離があるといった感じで三重苦であった。あまりに私が大変そうにしているのでカートに乗ることを勧められたのだが、頑なに歩き続けた。20年来の付き合いになる昔の会社の同僚から「松蔭さん、ストイックですね」と言われた。何のことはない、三男の小学校の卒業式が迫っており、それに着て行くスーツが少々きつくなってしまっていたので、少しでも痩せたかっただけなのだ。5年ほど前にピッタリのサイズのものを作ったのだが、その時より1.5kgほど体重が増えてしまったことが原因である。昨年末、2年ほど前に辞めたパーソナルトレーニングのトレーナーの20代の男の子と2人で飲んだのだが、通っていた時に教えてもらったストレッチを今も毎日5分ほどではあるが続けていることを伝えたら、やはり同じことを言われた。それも、40歳を過ぎてフットサルなどのダッシュをするスポーツをしたときに、ふくらはぎの肉離れが起きるようになったのでその予防のためにしているだけに過ぎない。
上のいずれのことも、「ストイック」と呼べるようなものではない。他に何かもっと適切な言葉がないかと少し考えてみたのだが見当たらなかった。彼らも無意識のうちに「ストイック」を消去法的に選んだのであろう。ただ、トレーナーの彼に言わせれば、多くの人が私のようには続けられないらしいのだ。「ストイック」について考えたことで、忍耐力や粘り強さは無いものの意外と継続することはできるのもしれない、という考えに至った。高校生の頃は学校の授業をさぼりまくっていたのだが、浪人生になったときに、夏休みまでの3カ月間はどれだけつまらなくても、意味が無さそうでもすべて出る、と決めた。私の同級生たちはその逆で、高校生の頃は怒られることもありちゃんと出席していたが、浪人生になれば各自の判断に任せられるので効率良く間引いていた。以前にもここで書いた気がするが、20代後半のある1年間は毎日日記を付けることを自分に課した。ある晩、飲んで帰って来てそのまま寝てしまい、2時か3時だかに「あっ、今日の分まだや」と起き上がってノートに向かったこともあった。さすがに365日すべてとは行かなかったが、休んだのは10日あったかないかぐらいである。ちょうど1年やって、「日記はもう良いか」となってやめた。1週間に1回のペースで自ら花を買いに行き、教室の玄関に生けていた。それは生徒が学ぶ空間を心地良くすることと私自身が初心を忘れないようにすることの2つの意図があった。結局10年続けて区切りとした。こうやって見て行くと、ストイックではないが、昔から自分が決めたことを途中でやめることが嫌なのだ。先の一文で、タイトルの意味は分かっていただけたのではないだろうか。
思った通りにできないことや自らの意志の弱さに辟易とすることは少なくないが、決めたことをやり続けることで最低限の自信のようなものを保てている気がする。他の人は、気持ちが挫けてしまわないように一体どのような工夫をしているのだろうか。