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2023.06.13Vol.594 少子高齢化について考える

 白い服を着ているときに限ってコーヒーをこぼす。そう信じ込んできたのだが、最近それが間違いであることに気づいた。日頃からそれなりに汚しているのだが、白以外のときはがんばって拭けば目立たなくなることが多いので気にしていなかっただけなのだ。事程左様に、問題をきちんと把握してないことは案外多い気がする。その状態で対策を打ったところでうまく行くことはない。
 さて、少子高齢化。このことに関して特別に問題意識があるわけではない。ただ、ニュースで取り上げられることが多く、それに伴い考える機会も増えるのでテーマにしてみたくなった。プラスチックごみやエネルギーなどの社会問題に関するデータが与えられ、それを踏まえて意見を述べることを求められる「資料読解」というテキストがあるのだが、その中には人口に関するものもある。これを機に頭の中を少し整理しておけば、今後生徒に教えるときに役立つという効果もある。
 まず、「少子化」と「高齢化」という2つの問題が重なっているから大変だと感じさせられるのだが、「高齢化」は必ずしもネガティブではない。「長生きできるようになって良かった」となるからだ。ただ、物事はそれほど単純ではない。ここで、平均寿命と健康寿命の差について見ておかなければならない。健康寿命とは、支援や介護を必要としない期間のことである。厚生労働省が2016年に発表したデータによると、その差は、男性で8歳、女性で12歳となっている。生活にどれぐらいの制約が掛かるかにもよるが、この年数は長すぎる。個人的には、3~5歳ぐらいであればまだ悪くはないかな、となる。平均寿命が延びるにしたがって、その差も少しずつ大きくなっている。それは、社会保障費の増大を意味している。高齢化が問題なのではなく、それに伴う不健康期間の長期化こそが問題の本質なのだ。70歳を超えた母は、今も現役でケーキの先生をしている。車の運転ができないこともあり、材料の買い出しなどのために自転車で元気に走り回っている。「骨折にだけは気を付けや」と伝えている。
 ただいま、6月13日の午後15時過ぎ。30分のふて転寝を終えたところである。目を閉じる前に頭をよぎったのは、アップできるのが23時ぐらいになるかもしれない、とのこと。なぜ、そんなことになったのかと言うと、世界の出生率のデータを調べたら、自分が想像していたものと大きくずれていたからだ。そして、行き詰まって現実逃避。起きた後、もう一度いろいろと検索してみると、「これだ」というのを見つけた。それは、2020年の合計特殊出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計した値であり、「1人の女性が一生の間に産むとされる子供の数」に相当する)のランキングである。それだと、福祉国家と言われるデンマークとスウェーデンはそれぞれ1.67と1.66となっている。本来であれば、もう少し比較検討して、信頼に足るかどうかのチェックをしなければならないのだが、既に時間的にも精神的にも追い込まれているため正しいものとして扱う。以下がそのサイトである。
https://ecodb.net/ranking/wb_tfrtin.html
 気を取り直して、少子化対策に話を移す。日本のそれは1.34である。上で挙げた北欧諸国との0.3の差を大きいと取るかどうかにもよるのだが、彼らでもその程度なのだから、ここは開き直って、「少子化対策」という概念自体を捨て去ってしまってはどうだろう。今回、私が最も主張したかったのはこのことである。中途半端にやるぐらいなら、少子化がさらに進むことを前提にして、それでもある程度うまく回るような社会にするための手を打てば良いのだ。それが実現すれば、高齢者を支えるための現役世代の負担が軽減され、出生率の上昇に結び付くのではないだろうか。残念ながら具体策を持っているわけではない。高く見積もった出生率を前提に社会保障の制度設計を行い、下方修正するたびにちょこちょこいじるから歪みが大きくなるのだ。1997年に政府が出した「目標とする合計特殊出生率」では、その時点で下降を続けて1.4前後まで落ち込んでいたにも関わらず、2020年~2050年まで1.6程度で推移することになっている。2022年はさらに落ち、過去最低の1.26となった。
 「少子化対策」と銘打つのであれば、もっとインパクトのあることをやるべきなのだ。出産育児一時金が増額されるから子供を産もう、とは中々ならない。児童手当になると、「増やします」となっても、少しの上積みであり、いつ減額されるかも分からないためほぼ効果はない。少子化対策というのは、予定に無かった子供を産んでもらうための政策である。現在は、出産育児一時金が50万円、その後所得制限はあるが児童手当として毎月1万円(子供の年齢や何番目の子供かによって金額は異なるが、ここでは分かりやすく1万円としている)が15歳まで支給される。それらを合計すると230万円となる。それであれば、出産した時点でその倍の500万円を支給してはどうだろうか、というのが私の提言である。ただ一括支給するのではなく、出産時に50万、その後18歳まで毎月2万円ずつぐらい振り込まれるという形式にした方が良い。この施策のポイントは生まれたときに全額を手にすることはできないが、その時点で500万円の所有権を親に与えるということである。こういうものこそ、マイナンバーと紐づけしてどうにかできないのだろうか。財源はどうするのか。その増額分の270万円をその人自身が25歳から65歳までの40年間で毎月返すと考えた場合、月額6,000円以内に収まる。
 ここまで述べてきたこと以外にも、この2年間でコロナ対策に100兆円というニュースがあったので、子供一人当たり1,000万円支給すると何人分になるのか、と計算したら、たったの1,000人分にしかならなかった。
 生徒たちには、身の回りで起こっていることに関して、「(自分に)関係ない」ではなく、興味を持っていろいろな角度から考えて欲しい。そのためには、我々自身が頭の体操を楽しまなければならない。率先垂範である。
 ただ今、19時5分。どれを履こうかと迷って、あえて選んだ白のデニム。思いのほか早く書き上がった分、汚さずに今日一日を終えるまでの時間はそれなりに残されている。

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