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2025.04.15Vol.682 旅でも醍醐味

 ここでも何度か述べているが、大学生の頃は年に一度、二週間ほど、建築を見たり美術館を訪れたりするためにヨーロッパを中心に旅していた。少し英語でコミュニケーションが取れるようになって来たところで帰国の途に就くことになり、「次回こそは事前に英語をもう少し勉強してから来よう」となるものの結局同じことを繰り返していた。
 さて、予定通り訪れた佐渡、一寸法師気分を味わえることを期待していたたらい舟は、動物園での小さい子向けの乗馬体験のように、内海をぐるっと一周して終わり、といった感じで、ものの5分から10分ぐらいであっけなく終了した。それはさておき、世界遺産の金山には「道遊の割戸(どうゆうのわりと)」という看板が立てられている山をバックにした撮影スポットがあり、そこに大学生ぐらいの男の子が3人いたので、「お互い撮り合いましょう」と声を掛けた。お礼を言って別れを告げたそのすぐ後に、山が2つに割けているのを見ながら彼らが「何であんな風になってるんやろ?」、「ほんま不思議やなぁ」というやり取りをしていたのが聞こえて来たので、「あそこ(近くの説明書きを指しながら)に書かれているように、露天掘りで、山を頂上の方から鉱石を削って、そこから金を採取していたためですよ」と教えた後に、彼らに聞こえるように、ふざけて「あんなんにならんように今の内からちゃんと勉強せなアカンぞ」と三男に伝えると、そのうちの一人が乗り良く「ほんまやぞ。ちゃんと勉強しいや」と返して来たので、「おお、説得力半端ないな」と突っ込んで楽しくお別れした。「露天掘り」というのは、中学か高校の社会で確かオーストラリアかどこかの炭鉱の名前とセットにして覚えた言葉だが、目にしたのは初めてであった。「学校の勉強に何の意味があるのか?」という問いがあるが、今回の露天掘りのように、後からなるほど、ということもそれなりにあるはずである。
 6泊7日の旅の6泊目を岐阜のサウナ付きホテルに決めたのはその日の夕方であった。学生時代の海外旅行でも最終決定がぎりぎりになることはそれなりにあったのだが、それ以前に複数の可能性を探っているので、決断した時点でどこも埋まっていて身動きが取れないというようなことはこれまでに一度もない。実際、そのホテルにも昼過ぎに一度電話をして気になることをいくつか確認していた。その日は、岐阜に寄った際に訪れるようにしているイタリアンの店で晩御飯を食べた後に、そのまま帰宅するということも考えていた。その翌々日に4時起きで淡路島に三男と釣りに行く可能性があり、それであれば体を休めるために一日早く帰った方が良かったからだ。結果的に乗りたかった船はメンバーが集まらずに出船しないことが分かったため岐阜でゆっくりすることにした。できて半年のそのホテルにして大正解であった。バーで一時間の飲み放題が付いていたのだが、喫煙できるため20歳未満の三男は部屋で待たせざるを得なかった。15室という小規模のホテルであったこともあり、私が行ったときは貸し切り状態であった。1年前までJ2で5年ほどプロサッカー選手をやっていた28歳のホテルの従業員の男の子にお酒を作ってもらいながらサッカー談議に花を咲かせていたのだが、途中から私より10歳若い37歳のオーナーがやってきて、ホテルの感想などを尋ねて来た。彼は元々名古屋で不動産業をやっていて、そちらの方である程度成功を収めて、今回初めてホテル業に手を出したということであった。その物件をいくらで買って改装費にいくらかけたのか、ということも教えてくれた。私の予想をはるかに下回る金額であったのだが、コスト削減だけを目的にしたわけではなく、サウナルームのひのきは、明るく見えるように黒ずんだ部分を全部切り落としたせいで必要な部材がその分増え、かなり高くついたことなども説明してくれた。その他、まだ小さい娘を名古屋に残しているのだが、この半年はほとんど休みなく働き、1週間で数時間家に帰って顔を見るだけのトンボ帰りを繰り返していてホテルのサービス改善に努めていること、人手が足らなければ自らも部屋の掃除をしていること、一生懸命仕事をせずになまじっか成功してしまうと仕事をなめてしまうことなど、仕事への真摯な向き合い方についても語ってくれ非常に勉強になった。身につまされた、と表現する方が適切かもしれない。話に熱中し過ぎたため、私は1時間を過ぎてもただ酒をいただき続け、一向に部屋に戻らない私にしびれを切らした三男が「まだ終わらないの?」と迎えに来たほどであった。GWの教室の1週間の休みを利用して今回果たせなかった静岡の御前崎に三男と二人で釣りに行く予定にしている。今サイトで確認したところまだ空きはあるようなので、またそのホテルに寄るのも良いかもしれない。もちろん、イタリアンもセットである。
 冒頭での海外旅行の話、これまで英語の勉強という観点からしか捉えていなかったのだが、今回新たな発見があった。旅行中はそれだけ現地の人と会話をしているということなのだ。佐渡では、半日だけレンタカーを借りたので、返した後に旅館に向かうタクシーで運転手のおじさんから、もうすぐ羽田空港と佐渡空港を結ぶ路線が試験的に就航すること、佐渡は女性がグループでハイキングに来ることが多く、それはイノシシやクマがいないので安全であることが理由であるとことなども教えてもらった。また、旅館のおかみさんからは昔大阪の天王寺に住んでいたことや新潟までフェリーで出た後東京に新幹線で出るより大阪に飛行機で飛ぶ方が便利で、ファンである“Bump of Chicken”のチケットも取りやすいのでコンサートの度に大阪に来ることなどを聞いた。
 今、いろいろと自分の仕事の仕方を見直している。その一環として教室の玄関に花を生けることを再開した。以前のように毎週ではなく、月に一度や二度でも良いから続けていく予定にしている。その花に関しても、私が気に入っている花屋が車で30分ほどのところにあり、教室とは反対方向なのだが、わざわざ買いに行くと私と同じぐらい強面の社長のおじさんがお勧めの組み合わせをアドバイスしてくれ、また、社長の手が空いていないときはおばちゃんたちとどれにすれば良いかとかどれが長持ちするか、などとやり取りをする。
 日常、非日常を問わず、会話なんだな、と。予定では「旅の醍醐味」であったタイトル、内容に合わせて少し手を加えた。久しぶりに長くなってしまった。

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